2017年07月03日 風俗部ニュース PR
横浜市中区の京急線日ノ出町-黄金町駅沿線の関係者らが、街の再開発に一定の条件をつける独自ルールを設ける検討を始めた。黄金町地区は戦後、売春をする違法飲食店が並び、2005年に一掃して現在は若手芸術家の制作拠点に生まれ変わった。独自のルールは、新たに建設される物件が売春の場にならないようにする狙いがある。「芸術の街」を確固たるものにしたいという。 (志村彰太) 京急線の高架を挟んだ両脇に、二階建ての小さな建物が並ぶ。かつて二百五十軒ほどあり、一階が飲食店、二階が売春に使われる連れ込み部屋だった。〇五年、市や県警などが連携して浄化作戦(バイバイ作戦)を実施し、違法飲食店はなくなった。 現在も建物が残っているのは百七十軒で、うち八十軒は市が借りて防犯拠点や芸術家の拠点になった。残りは健全な飲食店が営業するなどし、かつての猥雑(わいざつ)さは感じさせない。 伊勢佐木署は特別チームを編成し、同地区を常時巡回。市や地元住民は〇七年、風俗営業の禁止やマンション開発業者に「ワンルームはできるだけ避けて」と要請する「街づくり協議指針」を策定した。地区の街づくりに関わる一級建築士の桜井淳さんは「ワンルームは連れ込み部屋に使われやすく、この地区にはそぐわない」と解説する。 住民、警察、行政の連携で風紀が保たれてきたが、最近状況が変わりつつあるという。街づくりを担うNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターの木村勇樹さんは「以前は開発に入る前に業者が地元に相談に来てくれたが、最近は十分な調整なく開発する業者が出てきた」と明かす。 実際、同地区でワンルームタイプのマンション建設が予定されている。空き家を活用した「レンタルルーム」も営業し、「変な使われ方をされないか心配」と関係者は気をもむ。今後も開発が続く可能性があり、「強制力のあるルールが必要」と同センターや地域住民らが、昨年九月から議論を始めた。 地域住民がつくるルールには、市地域まちづくり推進条例に基づく「地域まちづくりルール」や、都市計画法などに基づく「地区計画」がある。特に地区計画は強制力が強く、違反した場合は市が是正を命じることができる。 いずれのルールも「地権者の多数の支持」が策定の条件で、市都心再生課は「地権者の権利を制限することになるため、慎重な検討が要る」とする。今後はどのルールが適用できるかを話し合い、地権者向けにアンケートを重ねる。来年に素案をつくり、数年かけて策定する目標という。 桜井さんは「もう、かつてのような姿には戻らせないという意識は、みんな一致している。浄化作戦が成功しているか、全国から注目されており、不断の努力が必要だ」と話している。 ◆「未来像を地権者に分かりやすく提示」 「地区計画」元町の場合 横浜市中区の黄金町地区の関係者が議論している街づくりの独自ルールは、同じ中区の元町地区などで策定された前例がある。元町まちづくり協議会の三浦順治会長は「地権者に街の明るい未来像を分かりやすく提示するのが大事」と、黄金町に助言する。 元町地区では一九九九年に仲通り、二〇〇三年に主要通りの地区計画をつくった。特に主要通りは、近隣に遊技施設建設の話があったことから、「急いで地区計画を策定した」という。 その地区に住みながら商売をする商店街の魅力を守るため、再開発の際は一階部分を商店や飲食店にし、住宅部分も「定住を目的としたものにする」と定めた。屋外広告も「色彩や装飾に配慮する」とした。 「自分たちの街を守る意識があったので、反対者はそれほどいなかった」と三浦さん。ただ「地権者でもそこに住んでいるか、いないかで意識が異なる」とも。黄金町地区の関係者によると、同地区は外国籍の地権者が多く、合意形成には時間がかかるとみられる。 三浦さんは「街のルールは、地権者の権利を制限するが長期的には街の価値を上げることになると、説明を尽くす必要がある」と話している。 (東京新聞)